待ちわびた

２０２０年１０月－出雲大社－
「この木戸良治という青年には、この娘がいいんじゃないか？」神戸を統括する神はそう言って大福を頬張る。
「いやいや、それじゃあつまらない。その青年には、このお局さんが相応しいよ」千葉で名を馳せる神が口を挟む。
大社には例年通り八百万の神々が集まって大盛り上がり。どういった縁結びを行うかで激論しているのだ。
「次の議題も控えているんだから、その青年の件はそろそろ決着しておくれ」お婆という愛称で親しまれる神が催促する。
「でもお婆、この木戸という青年は、そんじょそこらの有象無象とは男ぶりが違うんだよ。適当に選ぶと、こりゃ浮気するぞ」そんな声が飛ぶ。
２０２１年１２月２４日―東京六本木―
「待った？」白いコートを着た美人が、木戸良治の前で申し訳なさそうな顔をしている。
「うん。長いこと待たされた」良治は微笑み、「でも、待ったかいがあった」そう続けて彼女を抱きしめた。