ゆかりそめの夜

旦那に不満があったわけではない。でも自分の中の女が叫んでいた。Love Affair(かりそめの一夜）。この香水をかければ、その夜の事は忘れてしまう。私は香水を鞄に忍ばせていた。今日会うのは、SNSで旦那の悩みを聞いてくれるフォロワーさんだ。顔も名本名も知らない。

「はじめましては変ですね？竹輪紳士です」

イメージよりイケメンだ。私は今日この人に抱かれる。少し小指が震えた。部屋に入り、お酒も入り、そして二人にスイッチが入った。

「ねえ、シャワー浴びてきて」

彼は拒んだ。しかし強引に彼を連れ込みシャワーをかけた。彼の顔はグニュっと溶け、その下から見慣れた旦那の顔が現れた。




次の記憶は自宅のベッドの中だった。

「おはみょぅ」

旦那はいつものように歯磨きしながら寝癖を直している。こっそり鞄の中を見たが、香水は無かった。全部夢か。

私は旦那の背中をいつもより強く抱きしめた。