恐怖のレントゲン

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ワシの体にどこも異常はない。耳が少し遠い以外はすべて健康体だ。なにせ若いころからの病院嫌いで、特にレントゲンは大嫌いだ。健康のために放射能を浴びるなんて、気が触れているとか思えん。
そんなワシが、肺炎になった。
息子たちに連れられて病院に行くと、血を抜かれたあげく、あれほど避けてきたレントゲンを撮る羽目になった。
待合室にいる間、老人たちのひそひそ声が聞こえてくる。
”恐怖のレントゲン”
”あなたも恐怖か”
みんな放射能を恐れている。やはりレントゲンなんて撮るもんじゃない。ワシはそういって病院から出ようとしたら、息子が引き留める。
「お父さん、ちゃんと検査しないと、治らないから」
「なにがケンタだ。チキンでも食べろというのか」
「ケンタじゃなくて、検査です」
 そうのこうのと息子と言い争っているとき、レントゲン室の扉が開いた。
「胸部レントゲンをお待ちの山川様はいらっしゃいますか」
その他
公開:20/12/25 15:30

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