「病」の象徴

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 パンデミック後、世界は戒厳令下にあり、他の生物との直接接触は禁じられた。そんな世界で人類は、インターネットという、人類から「身体」を奪う機構の恩恵を十二分に享受していた。
 物資の供給や生産、配送はすべてAIによる最適化とオートメーション化が実現している。人類はクリーンルームという個室を一歩も出ることなく、健全に一生を終える。
 人類はこの世界を存続させるAIのために、自分の脳のリソースを開放することを義務付けられ、結果、人類とはただ一つの脳を共有する「私」となり、AIが統治する世界は、巨大な自分だった。
 そんな世界で、僕たちメンテナンス業務従事者は、もっとも下賤とされている。僕たちは一回一回の訪問の前後に徹底的に消毒をされ、訪問の記憶をも消去される。
 僕たちのメンテナンス活動は「病」を象徴する。そしてこの世界に「病」の記憶は決して共有されない。
 僕たちはAIから、任意に選ばれる。
SF
公開:20/12/25 10:32

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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