White Days

街を歩けばクリスマスソングが聞こえる。

コートやマフラーが手放せない。やがて雪が舞う。

ポケットに手を突っ込む。わずかに指の届かない奥底で、小人が踊っている。

誰のポケットの中にも、小人は住んでいる。ただ、気づかないだけなんだ。

人の心からこぼれ落ちてきた感情を、小人は拾い集め、ポケットの中で大切に温めてくれる。

一心不乱に打ち込んできた何かに失敗して、こらえた涙。

理不尽な先生や上司にぶつけることのできなかった、怒り。

なかなか言い出せない。でも、何より強い、誰かを好きだって気持ち。

年に一度、小人たちは、そんな感情たちに息吹を注ぐ。

そして、感情の持ち主にそっと届けてくれる。

あの時の素直な気持ち、忘れないでね。

小人たちが届けてくれる、メリークリスマス。

冷えきった心を、ポケットの奥底から、ゆっくり温めてくれる。