“出る”というホテル
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浴衣を着た湯治客で賑わう温泉街。その一角にあるホテルは“出る”という噂のある部屋があった。
彼はバスの運転手。観光シーズンは、彼らスタッフの泊まる部屋はその手のいわくつきのところが多いという。ご多分に漏れず、彼が来たのは心がざわつく部屋であった。
先客がいる。見ず知らずの相手とひと晩を過ごすなど、彼には許容できなかった。すぐにフロントに掛け合おうとするが係が誰もいない。まだ19時過ぎだ。これから泊まりに来る客もいるだろうに。
しかし、なぜかホテル内がばたばたしている雰囲気がある。顔面蒼白の客が、どうやら部屋を移動するようだ。そのためにフロントにはいなかったのだろう。戻ってきた係に彼は話しかける。
「部屋に先客がいたので、変更して欲しいのだが?」
「ご用件をうかがいます」
彼の肩越しに、後ろの客に係が話しかける。
「俺は無視かよ!」
怒りにまかせた彼の拳は空を切った。
彼はバスの運転手。観光シーズンは、彼らスタッフの泊まる部屋はその手のいわくつきのところが多いという。ご多分に漏れず、彼が来たのは心がざわつく部屋であった。
先客がいる。見ず知らずの相手とひと晩を過ごすなど、彼には許容できなかった。すぐにフロントに掛け合おうとするが係が誰もいない。まだ19時過ぎだ。これから泊まりに来る客もいるだろうに。
しかし、なぜかホテル内がばたばたしている雰囲気がある。顔面蒼白の客が、どうやら部屋を移動するようだ。そのためにフロントにはいなかったのだろう。戻ってきた係に彼は話しかける。
「部屋に先客がいたので、変更して欲しいのだが?」
「ご用件をうかがいます」
彼の肩越しに、後ろの客に係が話しかける。
「俺は無視かよ!」
怒りにまかせた彼の拳は空を切った。
ホラー
公開:20/12/23 08:23
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彼こそがその正体
実態が無いので拳は空を切る
オオカミの自信作
武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。
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