Ⅱ．008 鉄屑とまやかし

「孫たちも面白いことを始めたもんだな」
「昔と変わらないね。世界を盛り上げるのは仕事でなく趣さ」
　魔導鎧装"ジャッコ"を駆り、"死"を蹴散らすドワーフと魔女の老夫婦がいた。
　元来、鍛冶屋と魔術屋の性質の違いから、お互いを"鉄屑"だ"まやかし"だと罵ることの絶えなかった両者が、互いの技術を認め合うきっかけを創ったのが、この二人であった。
　彼らは若かりし頃から、互いの技術に可能性を見出しており、それが原因で周囲から敬遠されるのも気に欠けずに、相反する技術の融合を目指した。
　その果てに創り出されたのが"魔導"。
　頑強な"殻"に守られた万能の"力"という理想的組成は、無償で公表された事によって、生活用品、電子機器、娯楽用品等に爆発的に普及してゆく。
　自分達を起点に、世界が変わりゆく様子を愉しむ。
　それは二人にとって、"魔導"がもたらす莫大な利益よりも大切な趣(おもむき)であるのだ。