ねこでねこ

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 今日は雨が降っていて。
 そして、猫を拾った。
 絵に描いたような小さな段ボールに入っていて、コンビニの五百円で売っている傘がさしてあった。鋭く誰の耳にも届きそうな声で鳴く、仔猫。私が見捨てたら、どうなっちゃうのか。そんなこと考えたくもなかった。
 郊外、賃貸、ペット不可。それでも、持って帰ってきてしまった。
 お風呂に入れて、小さな身体の汚れを落とした。泥で見えなかったが、トラっぽい柄があった。寒かったね、寂しかったね。もう大丈夫だよ。私の手の中で鳴き続ける仔猫に対して、声をかける。かければかけれるほど、鼻の頭は熱く目の前はぼやけた。
 次の朝は、いつもより清々しかった。仔猫の声で起きて、寝顔を見ながら家を出る。
 何時もと違う職場への道を歩く。昨日仔猫を拾った場所でぼーっと立っているスーツ姿の男性がいた。
「よかった」
 小声だが、確かにそう聞こえた。優しく低い落ち着いた声だった。
その他
公開:20/12/22 22:09

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