ユカリの城

山の麓に、城が建設されていくのを窓から眺めていた。
城が完成したとき、私はその城を訪れた。
正門は開放されており、そこにゆかりのある人々がいた。「ようこそユカリの城へ」と古い友人が言う。
「ユカリの城？」
「君が描いたユートピアじゃないか」
人々は私の名を呼んで取り囲んでいる。
私はこの城で暮らすことにした。
気の合う仲間がいて、私を否定するものは誰もいない。
歌を唄い踊り、談笑しながら美味しいものを食べる毎日だ。
あることに気づいた。
何一つ自分が成長していないことだ。
私は旅に出ることにした。
新たな『縁（ゆかり）』を築いてこの城に帰ってくると約束して——。
数年後……。
ユカリの城は増築され壮大な敷地となっていた。
旅で出会った仲間たちがいる。
私は再会に歓喜して抱き合った。
「ともに暮らそう」
ユカリの城は人間を成長させる糧なのだ。
私は旅に出る。
新たな城を築き続けるために……。