鼻腔気道断面図

狭い小路を逃げていると広い場所に出たんです。何から逃げていたかって？　もちろん「奴ら」からです。標識を見ると広域避難場所とありました。避難場所といってもこんなところでは奴らはすぐに見つけます。道路は広く、芝生も見通しが良すぎます。ふと足元を見ると路面に一枚の切手が落ちていました。それには鼻腔気道断面図の文字があり、人の顔の断面図が印刷されています。ここしかないと思って、切手のなかに飛び込みました。するっと入れました。図の耳の穴に入りました。そこから管を進むと鼻に行き当たりました。鼻の穴は光っています。どうやら蛍光インキで印刷されているようです。少し戻って口腔から喉に向かいました。喉の奥のずっと深いところへと逃げようとしたのですが、奥には進めません。当たり前です。切手は二次元平面でしかないのですから。ぐるぐると気道を廻っていても奴らに見つかります。仕方ありません。小鼻に潜むことにしました。