つながりをとじこめた

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三ヶ月ぶりにあった修二は、少し痩せたように見えた。感染症拡大で、世界が、日常が、すっかり変わってしまうことを知った。画面越しではない彼の姿に、こんなに背が高かったっけ、と戸惑う。結局忘れてしまうのは、そんなことなのだ。

修二は小さな箱を差し出す。箱根寄木細工の、しかけが施された秘密箱だ。
「感染が広がる前、実はしおりのおじいさんのところで教えてもらっていたんだ。完成したら、プロポーズしようと思って」
修二は、はにかみながら箱をあける。そこには、小さなダイヤモンドがちょこんと乗った指輪があった。

私は、目の前の光景がにじんでいくのを感じた。修二の手に、おじいちゃんの手が重なる。しわしわで、ごつごつした、月日の刻まれた職人の手。子どもだった私の小さな手を優しく包み込んだ体温を思い出す。
修二はまっすぐに私を見る。
「結婚しよう」
返事のかわりにあふれた涙は、ダイヤモンドにおちていった。
その他
公開:20/12/23 17:53

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