『か』から始まる『サブマリン』

カマキリは夢見た。
深い海の底に何があるのか。
その大きな瞳でひと目見たいと願った。
遠くから青い海を見たことはある。
だが灼け付く浜辺へは足を踏み入れることさえ出来なかった。

(潜水艦でもあればなぁ…)

カマキリが乗れる潜水艦なんて、あるはずがない。
それでもカマキリの見果てぬ夢は募るばかりだった。

そんなある日のこと、カマキリはふと思い付いた。

(そうだ！カモメに運んでもらえばいいんだ！)

「カモメさん、僕を海へ運んでくれないか？」
顔馴染みのカモメに頼んでみた。
『海へ？そんなことをしたら死んでしまうよ？』
「それでもいいんだ…」

カマキリの熱意に負けて、カモメはヒョイとカマキリを掴んで海へと飛び立った。
空へ舞い上がったカマキリは、上空から紺碧の海を眺め恍惚の表情を浮かべた。
「あぁ…これが海か…」
ポトリと落とされたカマキリは、深く深く、海の底へと沈んでいった。