クリスマスなんて大嫌い〜前編〜

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クリスマスなんて大嫌いだ。
耳障りなクリスマスソングも、目障りなイルミネーションも。

友達同士や恋人達でごった返す街を、ニット帽を深く被って、ただひたすら、真っ直ぐに突き抜ける。横断歩道が赤信号になり、足止めを食らった時、向こう側に一組の家族連れが見えた。
「ことしはサンタさん、なにくれるのかなぁ!」
「何だろうな」
「良い子にしてたから、きっと良いものくれるわよ」
ざわめく街の中で、その家族の会話だけが聞き取れたような気がした。胸の奥が痛くなる。それ以上何も見たくなくて、何も聞きたくなくて、私は足早に家へと帰った。

私の両親は共働きで、幼い頃から一人でいることが多かった。忙しい両親の手を煩わせたくなくて、ずっと良い子にしてきた。だから、クリスマスなら、サンタさんが願いを叶えてくれると思ってた。
『お父さんと、お母さんと、一緒にすごせますように』
けれど、その願いが叶うことは無かった。
その他
公開:20/12/21 12:29

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