ファンタスティック・コロナ

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ついに感染したかな。
喉奥が焼けるように熱い。蛇口に口をつけて勢いよく水を飲む。じゅうう、という音がして湯気が吹き出した。間違いなさそうだ。

コロナドラゴン感染症。剣やら魔法やら人語を解する多種多様な種族、壮大な風景の影に隠れて忘れられがちだが、ファンタジー世界にも感染症は存在する。
コロナドラゴンは炎龍の一種だが、特殊な胞子を他の生物に寄生させ、竜化することで繁殖する。竜化が完全に進行してしまえば、それは新たなコロナドラゴンそのものなのだ。

まいったなあ。僕がゲホゲホと咳を撒き散らすと火の粉が舞い、最後のひと咳が火球を作って飛んでいくと、壁の一部をこんがりと焼いた。
憧れていた竜人とは違って、二度と元に戻ることはできない。
味覚症状が出てきた。何せ口に入れると燃えてしまうんだから、味わえるわけもない。

コロナで退屈になった元の世界から逃げてきたのに、どうしてこうなるんだろう。
ファンタジー
公開:20/12/21 07:00
更新:20/12/21 06:59

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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