ユカリスと縁の実

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縁結びコロコロ。えんむすびコロコロ。
本当なら出会うはずだったのにすれ違ってしまった縁や、時期を間違えて実ってしまった縁の実が転がっている。
「放っておくと腐ってしまうだけだからねぇ」
お母さんが忙しそうに実を拾う。僕らユカリスは行き場をなくした縁の実を拾って食べる。
ユカリカリッ。ユカリカリ。
「食べ過ぎては駄目よ」
「はぁい」
僕らが食べた縁の実は、土に還って縁の樹の栄養になる。出会えなかった縁もそうやってつながってるんだって。
落ちてる実をせっせと巣に運ぶと、食べ切れない分の縁の実を土に埋めた。でもいつも埋めたことを忘れちゃうんだ。
埋められた縁の樹はやがて芽を出す。ほら、そこに小さな芽。隣には沢山の実がなった大きな樹が二本、小さな芽を守るように立っていた。
風に吹かれてユカリユサリと枝揺らし実を落とすと、ユカリ鳥が咥えて飛んでいった。
どこか遠くの地で待ってる誰かに縁を運ぶんだね。
その他
公開:20/12/20 13:30

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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