寒色観覧車

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 夕日の方で吹奏楽部の重低音が聞こえて、溶けた。校舎裏の僕は汚れた制服を脱ぎ捨て、うずくまる。
「なぁーにしてるの? そんなとこで」
 見上げれば可愛さと人気を兼ね備えた彼女の姿があった。
「上履き隠されたんだ。僕虐められてるから」
「いっしょに探してあげるよ」
 どうして彼女みたいな人が僕に優しくしてくれるのだろう。
 渡り廊下の向こう、手洗い場の先。
「みーつけた」
 日が暮れようとしていた頃。彼女は焼却炉から僕の上履きを見つけだしてくれた。
「お礼に付き合ってよ。行きたいとこがあるからさ」
 百貨店の屋上に色褪せた観覧車。上昇するゴンドラから見降ろす僕等の町。それは、淡い恋だった。
「ありがと」
「お礼言われるような覚えはないよ、僕」
「君のおかげで私は人気者になれた。虐められっ子を助ける良い子だからね。でももう興味ないな。私、転校するの」
「えっ?」
「君に嫌がらせしてたの私だよ」
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公開:20/12/20 06:11
更新:20/12/20 06:12

木戸要平

講談社が運営する小説投稿サイト
NOVEL DAYSにて執筆中
https://novel.daysneo.com/sp/author/Sisyousetu/
 

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