鹿せんべい・おばさん・怖!

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「これ、もっていき」
 それは、おせんべいに見えた。駄菓子のうすやきせんべいに似ている。
「これを鹿さんに会ったらあげな」
「それって鹿せんべいじゃ」
 おばさんは、いかつい顔を左右に揺する。
 私はなんだかゾッとした。深夜、なんとなく好奇心で、せっかくの奈良旅行だから、真っ暗な神社の写真でも撮ってインスタ映え! なんて思い立ち、今、深夜2時過ぎ。
 おばさんは、厚いダウンに顔半分をうずめながら、鳥居の傍らに立っていたひとだ。
「…えっと。お代金は、いくらですか」
「いらんよ。はよ、行け」

 急に嫌になったけれど、おばさんの目があるから、引き返せなかった。
 鳥居をくぐると、そこは――

 まっしろな、白と黒が反転したモノクロ世界だった。

 ここから先の記憶は全然ない。けど、ドス黒の鹿がいて、鹿せんべいをあげた気がする。なんだか朝がきた。
 二度と、深夜の神社には行けません。怖。
ファンタジー
公開:20/12/20 02:51
更新:20/12/20 03:01
奇怪 奇妙な話

甘海老

しんざんもの。ショートショートたのしいです。
noteでも500字~2000字くらいの短編をよく書いてます。
https://note.com/ebiebi3no3

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