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小学生の頃、鉛筆が落ちて隣の席の人に拾って貰った経験は皆さんもあると思う。もし、その鉛筆に不思議な力があったら…。

「はい、落ちたよ」
「ありがとう」
鉛筆に描かれたキャラクターが好きなの?という会話をきっかけに、私たちはよく話すようになった。季節を重ねる度に、2人は仲睦まじくなっていった。

高校卒業後、一旦別々の道を歩んだ。数年後、桜が咲いた日に落とした顔ペンをまた拾ってくれた人がいた。手の主を見るとあの子だった。
後で聞いた話だが、鉛筆には50万本に1本、人と人を結ぶ「縁筆」なるものが存在すると言う。だが、縁筆は他の鉛筆と区別がつかない。それでも人知れず、縁を描いているのだ。

今、自分の隣にはあの子と来年小学生になる子どもが眠っている。用意した鉛筆セットを思い出し私は願った。
この子のこれからの日々が、素敵な縁で満ちたものになりますように。
ころんと、えん筆が転がる音がした。
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公開:20/12/19 20:03
不思議な話 鉛筆

リコリスベリー

リコリスベリーに名前を変更しました。
SSの世界に魅せられて、ゆるく作品を書いています。

おとぎ話の別の人物目線、人ならざるものたちから見た世界、もしもの物語を中心に書いています。

初心者なので、いたらない点もあると思いますが、よろしくお願いします!

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