時は金なり

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「お会計、六千六百円になります」
「じゃあ、タイムペイで払いますぅ」
「タイムペイですね。ではおでこを出してください」

 新たな支払方法、タイムペイが導入されてから僕は、会計の度にそれで支払っている。店員がバーコードリーダーを、体温を測るかのように客の額にあてがうだけで会計は済むので手軽だ。
 タイムペイは一円につき五分、自分に残された時間が換金され支払われる。
 タイムペイを利用し始めてから、僕の周囲の動きが徐々に早く感じるようになった。道ですれ違う人々の動き、信号が赤から青になる速度、上司の説教時間など、何もかもが早い。自分だけがノロマになったような感覚だ。
 支払う度に周りの動きはどんどんどんどん加速していく。正月に餅を食べてる間に桜が咲き、花見をしている間に紅葉を迎え、紅葉狩りをしている間に桜が咲き始めた。一年一年が瞬く間に過ぎ、僕は、もといワシは天井のシミを数えているうちに…
その他
公開:20/12/19 18:41

秋村ふみ( 青森県 )

300文字という限られた空間で、自分なりのモノガタリを描かせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

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