息切れ階段

仕事を片付けていたらすっかり遅くなった。周りは次々に帰ってゆく。気がつくと最後の一人。25階のオフィスのガラスの壁から周りのビル群を見ながら両腕を大きく伸ばして深呼吸した。ビルの谷底に電車のホームが見える。終電にまだ間に合う。パソコンをオフにして、オフィスを出る。エレベータで降りビル直結の通路を駅に向かう。ホームのベンチで電車を待った。ふと見上げるとオフィスに明かりがついている。誰か来たのか。ガラスに人影が立つ。腕を伸ばして深呼吸をしている。私は気になってビルに戻った。オフィスに入ると明かりがついている。誰も居ない。外を見た。駅のベンチに一人が座ってこちらを見ている。目があったような気がした。私は明かりを消してオフィスを出た。エレベータが故障で開かない。仕方なく階段を降りた。響く足音。足早に降りると息が切れる。誰かが速い勢いで上ってきてすれ違った。顔を見る間もなかった。誰だったのだろう？