19
20
「制限時間は90分です。良縁に恵まれますように」
農園主がそう締めくくると、バスツアーの客たちは我先にと園内へなだれ込んだ。手には受付で渡された鋏と篭。木からは色とりどりの実が下がっている。
縁結びが民営化されてから、縁もゆかりも、文字通り自分の手でもぎ取る時代になった。人と人、動物に物品、植物。善し悪しも対象もさまざまに、園内で採った実の数だけ、なにかしらの縁が結ばれる。
「縁狩りは初めてですか?」
眺めてばかりいると、いつのまにかすぐ隣に農園主がいた。
「リタイアしたら急に暇になってね」
「そうですか。民営なんて胡散臭いかもしれないですけど、うちは縁結びの神社からご神水をいただいてるんです。おいしく育ってますよ」
ゆかりの質ではなく果実の味に胸をはった農園主は、清々しく笑った。
「これもまた縁だ。またくるよ」
私はからっぽの篭いっぱいの加護を農園主へ授けると、住み慣れた神社へと戻った。
農園主がそう締めくくると、バスツアーの客たちは我先にと園内へなだれ込んだ。手には受付で渡された鋏と篭。木からは色とりどりの実が下がっている。
縁結びが民営化されてから、縁もゆかりも、文字通り自分の手でもぎ取る時代になった。人と人、動物に物品、植物。善し悪しも対象もさまざまに、園内で採った実の数だけ、なにかしらの縁が結ばれる。
「縁狩りは初めてですか?」
眺めてばかりいると、いつのまにかすぐ隣に農園主がいた。
「リタイアしたら急に暇になってね」
「そうですか。民営なんて胡散臭いかもしれないですけど、うちは縁結びの神社からご神水をいただいてるんです。おいしく育ってますよ」
ゆかりの質ではなく果実の味に胸をはった農園主は、清々しく笑った。
「これもまた縁だ。またくるよ」
私はからっぽの篭いっぱいの加護を農園主へ授けると、住み慣れた神社へと戻った。
その他
公開:20/12/20 15:43
縁
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
ログインするとコメントを投稿できます