スマホの海坊主

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友人とツーリングに来た次郎君。
とある波の静かな入江に到着した。
「ここは昔、よく海坊主が出たらしい」
「ふーん」
「明け方に船から見ると、体の長い黒い化物が、海面に立ってるって」
友人は笑った。「それって蜃気楼なんだよ」
「へえ」
「朝の海面の上の空気と、その上の空気の密度が違って、像が曲がって長く見えるって」
「像?」
「水面に顔を出してる、アザラシらしい」
「なぁるほど。それが海坊主かァ」
 
二人は笑い、入江をバックにスマホで写真を撮った。
ところが! 撮れた画像は、二人の首がロクロ首の様にひょろ長く伸びていた。

友人は首を傾げて考えていたが、ふとつぶやいた。
「あっちに2本の電波塔があるよ。右は携帯の5G用の塔で、左は4G用かな」
「うん」
「2つの違う電波の層で、スマホの画像が屈折したのかも」

次郎君は笑って答えた。
「じゃあ、僕らのこの写真はまさに、イマ風の海坊主かもネ」
ファンタジー
公開:20/12/20 15:10
更新:21/01/04 23:24
蜃気楼 電波の蜃気楼?

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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