三割の世界を破壊しよう

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 晩ご飯。娘の美樹はマグロの刺身を美味しそうに頬張りながら言った。
「ヒトは目とか口があるのに、魚にはないの面白いね。こんな体で海を泳いでるんでしょ」
 爆弾発言だ。
 夫は喉にマグロを詰まらせ、私は食器を床に盛大にぶちまけた。
「美樹……!」
 私と夫の心はシンクロした。

「え? え? これ、魚?」
 大きな水槽の前で、美樹は歓喜の舞を披露していた。
「いつも食べてる……ア、アジは?」
「これ」
「えええええええええええええ」
 結局閉館までこの調子だったので、飼育員も思わずオロオロとしていた。

 帰りたくないと駄々をこねる美樹を車内にねじ込み、ふてくされる美樹に私は言った。
「ねぇ、美樹。今度人魚に会いにいこうか」
「ジュゴンのことでしょ。さっき見たよ」
「違う違う、本物の人魚。魚のことも、人のこともすっごい詳しいのよ」
 美樹の目が光った。
 美樹の世界が広がった。
その他
公開:20/12/18 16:02

shomin shinkai( 日本 )

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