電飾鳩

16
17

鳩の帰巣本能を利用し、遠隔地から手紙などのメッセージを届ける、通信手段となっていた伝書鳩は、昨今のデジタル社会の到来や電磁波の影響もあって、その役目を終え、次々にリタイアしていた。
そこで、伝書鳩の新たな役目として、冬のシーズンに街中を光輝くイルミネーションで彩り、街路樹などを照らす、電飾鳩が与えられた。
電飾鳩は、鳩レースで優秀な戦績を収めたものの中から、厳しい訓練を経て選ばれた精鋭だ。極細の光ファイバー照明を嘴に携え、街に設置した移動式の巣箱(あるいは鳩舎)ならぬ電飾箱に運ぶ。
「ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ、電飾がほしいか、そらやるぞ、一度にそろって飛んで行け~♪」
お馴染みのメロディーを合図に、電飾鳩は、小雪が散る師走の夜空を颯爽と飛び回り、宙を舞う無数の光が季節の風物詩となっている。
クリスマスを間近に控え、幸運を呼ぶ白い電飾鳩は、サンタクロースやトナカイとともに忙しい日々を送っている。
ファンタジー
公開:20/12/19 07:07
帰巣本能 伝書鳩 デジタル 電磁波 イルミネーション 電飾 光ファイバー 照明 クリスマス

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容