青空市のえんきりえん結び

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「これ、1000円きれない?」
「きれないっすねぇ~…」
 夏が遠のいた。青空市も冷え込んで、店主たちは、ダウンコートにマフラーなどの装備品。よく冷える一日だった。
 120デニールタイツを履いた、防寒対策をしっかりやっている女子高校生は、まだ値切りにねばる。
「おにーさん、アタシけっこうよく買うじゃないですか」
「そーいわれても…。出展だってタダじゃないんよ、お嬢ちゃん。んなにこのイヤリング欲しいの?」
「そう言われると、足元をみられてるみたいで頷きたくありませんけど。アタシも足元みちゃおうかな。カノジョと別れると、カノジョの所持品を売っぱらってますよね」
 マフラーに顔をうずめる男が、鼻を、すん…、とさせる。
 女子高生は、手袋の小指を立てた。
「そろそろ、アタシにチャンスがめぐってきてません!?」
「…せめて高校卒業してからっすねぇ~…」
 値切りに抵抗するのと同じ声で、男もねばる。
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公開:20/12/19 03:38

甘海老

しんざんもの。ショートショートたのしいです。
noteでも500字~2000字くらいの短編をよく書いてます。
https://note.com/ebiebi3no3

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