心臓の記憶

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その小さな公園を見た時、心臓が跳ねた。
鼓動に合わせ、とくとくと温かい感情が全身へ巡っていく。
象の滑り台、錆びていて漕ぐたびにきぃきぃと鳴るブランコ、正方形の小さな砂場。
初めての場所なのに懐かしくて涙が出そうだった。
――両親と手を繋いで訪れたのだろうか。
――友達と一緒に遊んだのだろうか。
僕とは縁もゆかりもないこの場所を、きっとこの心臓が記憶している。
僕は駆けだした。
名も知らぬ命の恩人が、かつてそうしていたように。
その他
公開:20/12/19 01:56

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