きつねどん

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「きつねどん」
「はあ、何でしょう」
きつねどんは、うさ公に呼び止められたので、幾分か迷惑げに見えるよう、振り向きました。
「さっき、柿を拾ったものだから。おひとついかが」
「はあ、どうも」
今度は、幾分かきまり悪げに。
「お母さんのお加減はどうですか」
「はあ、悪くは無いようで」
気遣いへの、微妙な感謝が見えるように。
「あなたの、お父さんは、あなたが生まれた時、たいそうお喜びで、報告も、跳ねながらやってきましたよ」
「はあ」
困惑に喜色を滲ませて。
「きつねどん。わたしたち夫婦は、あなたのこと、子供のように思っているのだから。ご遠慮なくね」
「はあ」
「何かあったら、駆け込んでらっしゃい」
言い終わると、うさ公は、肩を、ぽん、とたたきました。
「はあ」
きつねどんは、
ぽろりと、涙をこぼしました。
そして、涙をこぼす、ふりをしているのだ、と分かるように、肩をいからせて、家に帰りました。
その他
公開:20/12/19 01:02

kashiku

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