意味深な言葉
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言霊を篤く信仰する国へやってきた。信仰の証として、言葉の意味を正しく理解する者でなければその言葉を使う事が許されない。なので国民は全員、定期的に語彙力を測る試験に参加して語彙を増やしている。この国において語彙の多さは社会的地位に直結するらしい。旅人である私はその試験を受けていないので発言は許されない。筆談は可能との事なのでメモを片手に様々な名所を巡った。件の試験会場。この世の全ての言語の辞典があるという図書館。劇場では言霊にまつわる神話を基にしたミュージカルが上演されていた。最後に言霊の神殿にやってきた。礼拝の人々に混じって神殿の回廊を進む。最奥の礼拝堂には、老人が玉座に据えられていた。目は虚ろで、何やらボソボソと喋り続けている。彼は言葉の意味を探究した結果、真理へと辿り着いた聖人らしい。耳をすまし、彼の声を聞いてみた。
「なにもわからない。なにも。なにも。」
これが真理なのだそうだ。
「なにもわからない。なにも。なにも。」
これが真理なのだそうだ。
ファンタジー
公開:20/12/16 22:02
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