ママのマグカップ

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「ねぇ、ママ?何でいつもそのマグカップを使っているの?」
ママの手の中にはアザレアが描かれただけのどこにでもありそうなマグカップ。
でも、いつも大事に丁寧に使ってまるで子供のようだった。
「ふふふ、ナイショ。」
「えー、教えてよ!」
「そうねぇ…あなたが20歳になったら教えてあげる。」
楽しそうな笑みを浮かべながら言った。

「ナイショ、教えてよ。」
そんな質問をしたのは私がまだ15歳の時。
その時既に病魔に侵されていたのを私は後から父に教えられた。
それから5年の時が過ぎ、今日20歳になった。
ナイショを抱えたマグカップの冷めたミルクティーを飲みベッドに入ると夢を見た。
見知らぬ男性とデートをしている夢。
一体あれは誰だったのか。
いつもは忘れてしまう夢を不思議と覚えていた。

首を傾げていると、家のチャイムが鳴った。
「今日隣に引っ越してきたーー。」

この先はアザレアだけの秘密。
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公開:20/12/18 03:09

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