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完全な暗闇の中で長時間過ごしていると、自分と自分でないものの区別が曖昧になってくる。

洞窟探検は俺のライフ・ワークだった。危険は承知していたし、いつかこんな日が訪れるかもしれないと、遺言書をしたためもした。だが伝えたいことは、まだ……。

いくら冒険慣れしていても、恐怖が麻痺しているのは動いている間だけだ。滑り落ちた裂け目の底の僅かな空間で、道具は何もない。壁は反り返っていて突起もなく、登るのは無理だ。

酸素が足りているだけ、感謝すべきなのだろう。だが助けの来る可能性はゼロだ。未踏ルートだし、今回は仲間も連れずにきた。妻にも、行き先の詳細は告げていない。

・・・

意識が途絶えていたようだ。不思議と恐怖心が薄らいでいる。少し眠ったら落ち着いたのか。穏やかな気分だ。

不意に、天井が音もなく輝き始めた。グローワーム? ……いや、



……星だ。夜の星。
俺を呼んでいるのか?

……。
その他
公開:20/12/18 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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