検温ゾンビ

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「ん…33.2」
「うわー、ずいぶん低いっすね。先輩、死んでんじゃないすか?」
「うるさいなぁ。そっちはどうなんだよ」
「32.4っす」
「似たようなもんじゃねえか」

出勤時の検温を義務付けられるようになって、もう数ヶ月がたった。額に近付けるタイプの体温計が事務所の入り口に設置され、従業員は名簿にその日測った体温を記入することになっている。
37.5度を超えていたら、問答無用でその日は欠勤となる。

「うわぁ、見てくださいよこれ。みんな34度以下ですよ」
「事務所寒すぎんじゃねえの?それともこの体温計がワザと低く表示されるように設計されてるとか」
「まさかそんな。じゃあ何の為に検温してんすかコレ」

そう言って後輩は体温計を机に置く。後ろから来た男がそれを手に取る。男の顔はほんのりと赤い。ケホ、と軽く咳こんでいる。
名簿に36.5と記入し男は作業場へと向かう。
まさかな。まさか…
公開:20/12/17 23:04

エビハラ( 宮崎県 )

平成元年生まれ、最近はショートショートあまり書いていませんでした汗
ログインできてよかったぁ…

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