ブロック

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 実生活でブロック機能が使えるようになった。ある人をブロック設定すると、その人とは今後一切関わりを持たないことができるようになったのである。判断能力に乏しい子供たちには、親や周りの大人がブロック機能を設定するような仕組みになっていた。
 人間関係で悩む人はいなくなり、自殺も激減した。人々は幸福に、ストレスなく生きられるようになった。
 数十年後のある日、一人の男が、
「はて、ブロックしなかった場合の世界はどうなっているのだろう」
 と、ブロック機能を解除してみた。
 すると、あらゆる人々からブロックされ、孤独に生きている人々の姿が目に飛び込んできた。
 認知症の老人。重度の肉体的、あるいは精神的な障害者。汚らしい浮浪者。
 そうした人々の目が、一斉に男の方を向く。
 男はあわててブロック機能を元に戻した。
 男は青ざめた顔のまま一度首を振り、再び"美しい世界"に埋没していった。
SF
公開:20/12/17 19:01
更新:20/12/17 19:37

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