小籠包のキモチ

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小籠包は楽じゃない。

ほっぺたをプーっと膨らませ、熱々の餡とスープを皮の中いっぱいに溜め込んでいる。

ボクらだって、熱いのを我慢してるんだ。

そもそも生まれた時はただの薄力粉だったのに、好き勝手、こねられて、いい迷惑ったらありゃしない。

挽き肉だって本当はステーキとかになりたかっただろうに、玉葱と一緒くたにされちゃって。

でもね、そんなひどい仕打ちを我慢するのには理由がある。

みなさんの口の中に入り、モグモグとやられる。熱い汁が解き放たれる。「アチチッ!」とかはしゃぎながら「美味いねぇ」って頰張ってくれる。

その声、全部、僕らにも聞こえてるんだ。

それが、嬉しい。

スープがぬるかったら、拍子抜けじゃないか。特に冬が深まるこれからは。

だから、熱いのを我慢する。

たまに、熱すぎて口の中を火傷させちゃって皮がぺろんと剝けたりもするんだけど、勘弁してね。

悪気はないんだ。
その他
公開:20/12/17 17:35

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

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