チリ交ヤマ

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チリ紙交換を生業とするヤマは、気が向けばトラックで町を流すが、その日に稼いだ金はすべて酒代に消えた。
古紙の回収場のそばにセブンというスナックがある。仕事を終えたチリ交たちが集まる溜まり場だ。常連であるヤマはここで酒を引っ掛けて誰にともなく暴言を吐く。口を開けば前歯の抜けた黒ずんだ歯茎が覗けるので、みな気味悪がった。
そんなある日、ヤマはトラックの下敷きになり、死んだ。泥酔して回収場の駐車場で寝ていたのだという。ヤマの小さな頭は無惨にもザクロのようにつぶれていた。

昭和という時代が終わり、町ではチリ紙交換の姿もなくなった。あのセブンというスナックがあった場所には品のいい美容院が店を構えている。
もちろん、そこにチリ交たちの姿はない。
その他
公開:20/12/17 12:11

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