ささやかなひと時

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星空の下。
ぱちぱちと音を立てる炎を見つめながら、独り想いに耽る。
夜の山は恐ろしげな雰囲気を醸し出すが、燃える炎がその恐怖を相殺していた。
ずり落ちる毛布を肩に掛け直し、コーヒーを啜る。
冷え切った空気と共に飲み込んだ熱いコーヒーが、身体の芯を燃やすように内側へと落ちていった。

「…そういえば、アレがあったな」

リュックの中を漁る。取り出したのは、ビスケットとマシュマロ。
マシュマロを近くにあった適当な細枝に突き刺して、焚き火で炙る。じわりじわりと緩く溶け出したマシュマロを、ビスケットに挟んだ。溶けたマシュマロが指先に触れて「あちち」などと声を出すが、答える者はいない。
多少の虚しさを覚えつつも、マシュマロを挟んだビスケットを齧り、少し冷めたコーヒーを啜った。うん、美味い。環境も最高で、その美味しさに拍車がかかる。
後は
「…遭難中じゃなけりゃあなあ」

助けが来るのは、もう少し先。
その他
公開:20/12/16 09:31

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