銅貨のソムリエ

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除菌だけのつもりが硬貨を磨きだしたらハマっちゃって、これなら舐めても汚くないぞと思った拍子に口に入れてた。磨いた十円玉を舌の上で転がすと、なんだか心地よくって目を閉じた。そしたら、路上のギターケースに十円玉が投げ込まれる景色が見えた。
他の硬貨も舐めてみると、公園の噴水、電話ボックス、鯛焼き屋さん、その硬貨が巡ってきたらしい景色がどんどん浮かんでくる。私は楽しくなって、次々色んな景色を味わった。
あ、私が生まれた年の十円玉。と思って舐めて、息を呑んだ。
真っ赤な夕焼けと自販機。ホームレス風の男が、自販機の下を漁って十円玉を見つけた。写真でしか見たことないけど、たぶん父。

それから私は、ときどきその自販機の下に私が生まれた年の十円玉を一枚隠す。夕日の欠片みたいにピカピカに磨いた十円玉。べつに会いたいわけじゃない。ただ、私はあの金属の味がする真っ赤な夕焼けを見て、会いたいなって思いたかった。
ファンタジー
公開:20/12/16 08:24
更新:20/12/22 13:05
縁(ゆかり) ランダムキーワード 10円玉を綺麗にできるソムリエ スクー 仕送りロンダリング

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