つじうら

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帯に引いた有平糖に、小さな紙片を巻いた飴菓子でした。
古い占いが元で、紙にはお御籤の卦や端唄が書かれています。食べて当てたものを読み、あるいは組み合わせて遊ぶ。郷里では年始の集まりに出され、子供時分は競って抓んだものです。
『ほれてつまらぬ』
おもむろに一つ。齧った飴にありました。
季節外れの託宣に胸を射抜かれた気がして、窓の外を舞い散る桜も恨めしい程。
『あきらめなさい』
解っている。菓子にこぼしても無駄な事。飴と一緒に溜息を砕きながら、鳴らない電話に耳を澄ますなら、こうして欠片なり伝えれば良いものを。
『おまえとならば』『共に三途の川までも』

予想通り、報せのないまま玄関が開き、両手に抱えた帰省土産と、悪戯坊主の得意顔。
『思いがとどく』
封が切ってあったので、大方残りも似た様な。
一体幾つ買ったやら。差し替えは卑怯ですよ。言の端の恋文を懐に、結局溜息は甘く。
次の大安には祝言です。
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公開:20/12/16 13:48
縁~ゆかり

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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