「ああ、つまらない。」

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世界は食糧難だった。戦争が起こると噂されていたが、世界は静かだった。
なぜなら、人々は食べることを辞めてしまったからだ。
「そもそも食事の時間がもったいなかったよ。僕は忙しいんだ。」
人々の食事は、栄養剤でまかなうことが普通となっていた。
慣れるまで人々は苦しんだが、慣れれば良いことばかりだった。
栄養がバランスよく補われ、空腹を感じにくく、食事にまつわる生活習慣病が減り、健康的でスタイルの良い人ばかりとなった。
食事で栄養を補うのはセレブの嗜みで、庶民の間では食事に対する興味も失せていた。
でももう、この頃の人々はそれは悪しとは思わない。
洗う食器も減った、生活に必要な家電も減った、買い物の時間も、食事の準備にかかる時間も生活の中から減った。
どこまでも合理的な世界が完成していた。

道端に老人が座っている。
その老人はしばらく栄養剤を眺めて、パクり。ザクザク、ザクザク、ごくん。
SF
公開:20/12/14 11:43
更新:20/12/14 11:44

御手洗 一貴

普段はTwittertで
画像1枚で物語が完結する『1枚小説』を
自由気ままに書いています。

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