極めて普通の決断

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 自宅に届けられた"それ"には、説明書と短い手紙が添えられていた。

『ハルモニア。時限式プラスティック爆弾。ご自由にどうぞ』

 誰からだ? 本物?
 様々な疑問が頭の中で逡巡し、男は混乱しかけた。
 使う? 俺が?
 "それ"が本物である証などどこにもないのに、どこにもないのにも関わらず、どう使うのかを――男は考え、考え続けた。
 会社に? 駅に? これが本物…いや、偽物なら、試すくらいは…しても、いい、よな?
 すぐ横で、太った妻がソファで寝転びいびきをかいているのが見えた――その瞬間、恐ろしい考えが脳裏に浮かび、男は「ひっ」と悲鳴を上げた。違う。俺はそんな人間じゃない! それは恐ろしい考えだった。けれど、恐ろしく魅力的な考えだった…。

 数日後、男は"それ"を持って警察に出頭した。
「…本当はもっと早く来るつもりで…でも、どうしても決断できなくて…迷って…でも…でも…俺は……」
ホラー
公開:20/12/14 00:14
ホラー、なのかな?

Sees

ショートショート好き。
得意ジャンルはホラー。
座右の銘は『清く正しくいやらしく』。
好きな書籍は『悪魔の辞典』と『悪魔の寓話』。
制限400字という発想に感銘。
コメントとフォローはできるだけ返します。

楽天ブログにて『株式会社SEES』の名でショートショートと短編小説掲載中。
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よろしければ、ぜひ。そして、たまに呟きます。
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さて、今日はどんな事件が起きることやら……。



 

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