カ足すトロフィー

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「父さん見て!私、優勝したよ!」
娘が俺に禍々しいトロフィーを見せてきた。
「ついに私もカ足すトロフィーを手に入れたよ!約束忘れてないよね。私、自分の店持つから」
溜息を吐く。好きにしろ。
娘はユリの専門店を開くんだと鼻息荒くしている。
ユリにカを足すとユカリになる。人が花を贈る時、そこに縁が生まれる。
だからユリの専門店を開くんだと。
俺の娘だ。上手くやるだろう。
俺は父としていくらか金を出そうとした。開店の足しになればと懐から出そうとして…やめた。
折角だ。足しにするのではなく時々確かめに行こう。
俺も母さんに花を贈る習慣を作ってやろう。
そんな事を考えながら俺は俺の力足すトロフィーを磨く。
俺のはカではなく力を足す。いつでも俺を頼れ。力を足してやる。
娘は苦笑いを浮かべる。
「私、家業は継がないよ」
どうやらウチは俺の代で閉店という悲劇的結末を迎えるらしい…俺は己の力不足を痛感した。
公開:20/12/13 20:33

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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