時間のつぼみ

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子どもの頃おじいちゃんとよく散歩した公園には日時計があって、文字盤を囲む煉瓦の花壇に座っておしゃべりするのが好きだった。時針の影がおじいちゃんの顔に写って、左から右へと少しずつ動く。
-ねぇ、時間は影なの?
-そうだなー。光、風、いや、鳥かも。ほら、チュンチュンって鳥が鳴いたら朝が来るだろ。
-そっか。時間は影で光で風で鳥で…
-蕾。
-え?
-時間は積み重なって、蕾になるよ。でもちょっと危ないぞ。
-え?
-地震雷火事蕾!ハハハハハ!
おじいちゃんにつられて私も笑ってしまった。

キンと冷えてなかなか寝付けない夜。雷鳴ととも小さな塊が降ってきた。窓に当たってパチパチと跳ね返る固い塊。雹?塊を1つ拾って手の平にのせてみる。その丸い塊は、透き通った黄色い花びらの重なりだと分かった。ふくらみ始めた蕾から、懐かしいあの公園の匂いがした。おじいちゃんが亡くなって1年、高校2年の冬だった。
その他
公開:20/12/15 04:07

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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