おやつショートショート・プリン

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 桜咲く頃、川沿いにプリンのテイクアウト専門の店ができた。
 オープンした時から行列のできる人気店。
 かく言う僕も、甘いものはそんなに好きじゃないはずなのに、仕事帰りの帰り道、店が近づくとどうにもプリンが食べたくなって列に並んでしまう。
 真夏の炎天下でも、今日みたいな台風の日でもそれは変わらない。
 むしろ、いつもより多いくらいだ。
 それにしても、どうしてこんなに惹きつけられるのか。
 確かに美味しいプリンだが、都会には他にもたくさん美味しいプリンはある。
 その理由がようやくわかった。
 強風の中、傘を持つのに必死で、いつものようにスマホを眺める余裕なんてない。自ずと視線は店へ。
 そこで僕は見た。
 他にも何人か気づいている。
 店の二階の軒下、風にあおられては激しく揺れて、上質なバニラとカスタード、香ばしいカラメルの香りを振りまいては人を引き寄せる、風鈴ならぬプーリンを。
 
ファンタジー
公開:20/12/14 22:37
更新:20/12/14 22:39

堀真潮

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