波の立っている方が空、雲のある方が海(KEITAさん「海と空」の二次創作)

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背中合わせの蒼空は海に見入ったまま言った。
「海斗。波が立っている方が空で、雲がある方が海っていうのであってるんだっけ?」
「そうだな」
俺は空を見つめながら答えた。

空の色が、おぼれそうなくらい深い。
視界をずらすと残像の濃淡がついて、空はひどく波立っていた。
じっと見上げていたせいか、頭がくらくらとして、
俺は空に落ちた。
目がしみて少し痛かったけど、
肺いっぱいに冷たい青を吸い込んで、底なしの空をどこまでも泳いでいった。

蒼空は身をのりだして、顔を海に近づけた。
砕けたガラスみたく青が反射している。海面の下を流れる雲に、ゆらゆらと水の影が光っている。
雲を目で追ううちに、身体が風で持ちあがり海に吸いこまれた。
浮遊感に身をまかせて、何層にも重なる雲をぬけると宇宙にたどり着いた。
いつも夜になると頭上で透けて見える天体と、同じ色をしていた。
ファンタジー
公開:20/12/14 22:26
二次創作 KEITA「海と空」

字数を削るから、あえて残した情報から豊かに広がる世界がある気がします。
小さな話を読んでいると、日常に埋もれている何かを、ひとつ取り上げて見てる気分になります。

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