時間のつぼみ

0
2

勇者としての才能を逸早く開花した俺は王に命じられるまま旅に出て、長い年月をかけ魔王を倒した。
人々は俺を称えた。それは同時に苦難の始まりでもあった。
俺は自由を奪われた。有名人だからか、それとも魔王すら倒せる力の持ち主だからか、国は俺を権力と言う名の檻に閉じ込め、動物園のパンダのように扱った。
欲しいものは何でも与えられる。その代わり外出を禁じられた。
子孫を残せと多くの女性をあてがわれた。打算に塗れた女性に恋愛感情などありはしない。
これは俺が望んだ未来ではない。
俺は魔王が持っていたアイテム、時間のつぼみを取り出す。
これには時間を遡る効果がある。俺は迷いなくそれを使った。
戻るは勇者としての才能を開花した時代。俺は自身の才能を刈り取り、一兵士として生きる事を選んだ。
その選択は間違いではなかった。
兵士として普通に暮らし、人並みの幸せを手に入れた俺は魔王を倒した時より満たされている。
ファンタジー
公開:20/12/14 18:48

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容