小さく裁いて
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暫く寝て暮らしているうちに部屋のドアは腐りはじめていた。
鍵穴からは白くふわふわとした綿毛のようなものが吐き出されていて、長く締めきったままの室内を浮遊している。
カーテンを開けると朝か昼かそう遅くない午後だろう光が射してきて、浮遊する綿毛のようなものが次々とポップコーンみたいに香ばしく弾けた。すると小さな犬や小悪魔的な美女が部屋を走りはじめて、死んだはずの祖母が入浴と着替えを繰り返すようになった。率直に言って怖い。私は部屋を出ようと立ち上がった。
ドアノブは熟れすぎた柿のように柔らかく、指がめりこんで回す力が伝わらない。ドアが開かなければ債権者集会や謝罪会見だって開けない。七海と産婦人科に行く約束や、妻と娘への土下座も果たせない。
私は腐った床から少しずつ地中に沈みこみ、すでに液体化した地下鉄とともに海へと流された。
裁判所で微生物レベルの審理がはじまるのは私がきれいに腐りきってからだ。
鍵穴からは白くふわふわとした綿毛のようなものが吐き出されていて、長く締めきったままの室内を浮遊している。
カーテンを開けると朝か昼かそう遅くない午後だろう光が射してきて、浮遊する綿毛のようなものが次々とポップコーンみたいに香ばしく弾けた。すると小さな犬や小悪魔的な美女が部屋を走りはじめて、死んだはずの祖母が入浴と着替えを繰り返すようになった。率直に言って怖い。私は部屋を出ようと立ち上がった。
ドアノブは熟れすぎた柿のように柔らかく、指がめりこんで回す力が伝わらない。ドアが開かなければ債権者集会や謝罪会見だって開けない。七海と産婦人科に行く約束や、妻と娘への土下座も果たせない。
私は腐った床から少しずつ地中に沈みこみ、すでに液体化した地下鉄とともに海へと流された。
裁判所で微生物レベルの審理がはじまるのは私がきれいに腐りきってからだ。
公開:20/12/14 15:32
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