星に願いを。

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きぃきぃと、ブランコの軋む音が公園に響いていた。
しみったれた顔をしたオジサンは、星が瞬く夜の公園で独り、ブランコを漕いでいた。

都会であれば不審者と通報されそうな絵面だが、田舎でひと気が少ないことが幸いした。

きぃ、きぃ。きぃ、きぃ。

オジサンは考える。なぜ自分は生まれてきたのだろうと。
台所の油汚れのような人生が、なにか意味があるとはどうしても思えなかった。
きぃきぃの音の間に、ため息が混ざる。

「どうせなら女の子に生まれたかったよ。」

自暴自棄なオジサンの声は、虚しく公園に響いて消えた。

しかし次の日、奇跡が起きた。

鏡を見たオジサンは、自分の顔を撫で回して「うそ……」と声を漏らす。
あんなに濃かった髭は消え、股の間のブツも無くなっている。

「なんか、違う……。」

鏡には、しみったれた顔をした、オバサンが映っていた。
ファンタジー
公開:20/12/12 23:00
願い

御手洗 一貴

普段はTwittertで
画像1枚で物語が完結する『1枚小説』を
自由気ままに書いています。

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