つばさの行方

老人は矢をつがえた弓を構えると空へと放った。
老人が放った矢は上空で羽でも生えているかのように暫く空を舞うと、あっという間にどこかに飛び去る。
老人は作業を続ける。矢をつがえ弓を構えると空へと放つ。何度も何度もそれを繰り返した。
中には大きな翼を持ってどこかに飛んでいく矢もいた。
「若い頃は戦場で人を殺していた俺が、まさか退役後にサンタの手助けをすることになるとはな…」
老人が先程から放っている矢は子供達の家に向かっている。サンタはそれを目印にプレゼントを配っているのだ。
羽の白い矢が刺さった家には良い子がいる。羽の黒い矢が刺さった家には悪い子がいる。
サンタもブラックサンタもこの目印があるからこそ、仕事が出来る。
時折、羽が翼になって刺さっている家がある。凄く良い子か、凄く悪い子のどちらかだ。
老人は翼の生えた矢の行方を見送るとショットガンを構えたスナイパーサンタサポーターと一息ついた。