屋上から目薬

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 屋上から目薬をさすのが、この市のしきたりなのだと言われた。だから、どの家にも必ず屋上が作られており、人々は目を潤すために、屋上から目薬をさしてもらうのだという。
 もしもこのルールを守らないと、一回につき罰金五万円を払わないといけないそうだ。
 そんな無茶苦茶なルールがあるのかと内心では思ったが、実際に住み始めてみると、確かに街の人々は皆、屋上から器用に目薬をさしてもらっているのだった。
 朝、通勤する前に人々は屋上から目薬をさしてもらって出かけているし、帰って来る時も誰かに頼んで屋上から目薬をさしてもらっている。
 私が勤めることになった市役所でも、お昼休みになると、職員のかなりの数の人が互いに目薬を屋上からさしてもらっていた。
 今はドライアイとは縁がないからいいけれど、将来的に目薬をさすようになったら面倒だなぁと思う。
その他
公開:20/12/12 07:42
奇妙な味 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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