赤い糸ではなかったので

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それは赤い糸ではなかったので、彼は子供の頃、愛してくれない母と、血の繋がらない父、そして愛されている弟と暮らしていた。
自分なんかいなくていいと思っていたし、実際そう扱われていた。
かねてから言われていた通り、十八になると家を出て、親兄弟との関わりは消えた。
寮付きの職場は、家族を持たない若者ばかりで、その中にいた自分と全く同じ境遇の女の子と、彼はあたりまえのように恋に落ちた。
それが、親と同じように、赤い糸でないことはわかっていた。でも二人は結婚した。
二人は言葉を交わさなかった。でも想いは決まっていた。

それが赤い糸ではなかったので、僕の両親は何度も結び直した。
そして幸せな人生を終えて。
僕も今、子や孫達に囲まれて幸せな人生を終えようとしている。
その他
公開:20/12/13 09:17
更新:20/12/13 09:18

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