現代恋愛の距離間

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「これ」

好きな人にワイヤレスイヤフォンを渡された。ただし、片耳分だけ。彼の冷たい指先が私の手のひらに少し触れた。

私が彼の目論見通りワイヤレスのイヤフォンを右耳だけにつけると、耳から甘い歌詞が流れてくる。なんか違うな、私は曲よりも小さく呟く。

好きな人とイヤフォンを共有してつけるって女子ならば憧れるシチュエーションだと思ってた。
心臓の音が相手に聞こえちゃうほどに近づいて、心臓の音が曲を掻き消すくらいうるさくなって、恥ずかしくなって顔を逸らしちゃうような甘い青春を想像していた私は小さくため息を吐く。

いつもなら嬉しく感じる隣の席との距離間も今日だけはちょっと物足りない。彼はどうってことないように窓の外をぼーっと眺めている。けれど、右耳だけから流れてくる曲は私にいつもとは違った景色を見せてくる。

隣の席で同じ景色を聴く彼の横顔は夕陽に照らされてちょっと赤い。私は歌詞に返事をした。
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公開:20/12/13 03:08
更新:20/12/13 12:07

めうっ!

2020/12/13登録。
基本的に思いついたらそのまま400文字書く人なので書き溜めとかプロットは一切ないです。作品投稿をクリックして初めて作品と向き合います。
この文字数になるとショートショートっていうかポエム……いやなんでもないです。

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